俺様男子の克服方法(短)

「お兄ちゃん!」

美音のお兄さん――義美(よしみ)さん――は穏やかな笑顔で手を振っていた。
やっぱ、好みだわ!

「礼子(れいこ)ちゃん久しぶりだね」
「はい、ご無沙汰しています」
「また妹が無理に誘ったんじゃないかな?」
「いいえ! 義美さんとお食事できると聞いて喜んで来ました!」
「相変わらずかわいいねー。あ、今日は誠人……誠人? あいつはまた……」

かわいいって!
美音の背中を叩くと、「あーはいはい」と呆れ顔をされた。
義美さんは飲み屋の前で女の人と話している背の高い人の腕を叩いてこちらに向かせた。
この距離からでもスタイルの良さと顔の良さがわかる。
あれが俺様か……いかにもっていう攻撃的な服装をしている。

「ったく、うっせぇな。いいだろ、ナンパしてたって」
「俺の妹と友達が来るって言っといただろ」
「どーせブスだろ。あーあ、今の美人だったのになぁ」

丸聞こえですけど。

「なんなのあいつ」
「あーゆうのが俺様なの!」
「信じられない。美音は好きなの」
「いや、二次元に限る」
「……信じられない」

よく紹介する気になったものだ。

「ごめんね、これが誠人。この子は妹の友達の礼子ちゃん」
「初めまして」

義美さんの手前、とりあえず笑顔で挨拶する。
気持ちは抑え込んで。

「お前が俺を好きな奴?」
「……はい?」
「どこで俺見たか知らないけど、俺は興味ない」
「おい、誠人!」
「……」
「悪いね、泣くか?」

我慢の限界!

「あんたなんかこれっぽっちも興味ないわ! 私が好きなのは義美さんみたいに優しい人なの! 顔が良いからって調子に乗るなっ! 俺様なんか大っ嫌い!!」

オーバーリアクションかもしれないけど、指で「これっぽっち」を強調してやったわ。
あ……俺様はどうでもいいけど、義美さんの反応気になるかも。
ちらりと義美さんを見るとお腹を抱えて笑っていた。

「誠人にそこまで言う女の子初めて見たよー! おもしろいね礼子ちゃん!」

よかった、告白だと思われていないみたい。
ホッとため息を吐く。

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