俺様男子の克服方法(短)


「じゃ、帰りますか」
「誠人さん待たないの?」
「待つ義理はない」
「だからお礼、」
「もう言ったし」

持っていたお茶のパックをゴミ箱に捨てるため立った。
美音は不満げな顔をしているが引き止めない。
どこにいるか知らないけど、すぐに来たりはしないだろう。
渋々立ち上がった美音と学食を出ようとすると、黄色い声が聞こえてきた。
「チョーイケメン!」「あんな人大学に居たっけ?」「見たら忘れないっしょ!」
……嫌な予感。
一人のかわいらしい女の子が声の中心にいる噂の主に小走りで近寄った。

「あの、私、」
「わりぃけど、待ち合わせしてるから」

私ならあんなかわいい子目の前に来て、冷たい態度取れないわ。
……さすが、俺様。

「って、なんで!」
「あ」
「ああ!」

しまった。
大声出したら目が合ってしまったではないか!
私の馬鹿!
俺様はニヤニヤしながら片手を上げて、その長い足をフルに活用して近づいてきた。
逃げたい。

「どこに行くつもりだったんだ?」
「別に……」
「ま、誠人さんを探しに学食出たんです! ね、礼子?」
「ほー」

見透かされているのも嫌だけど、妙な誤解を生むのも気に入らない。

「あんたに会わないように帰るつもりだったんですけど」
「だろうな」
「わかってんなら来るな」
「礼くらいしろよ」
「電話でもしたじゃないですか。あれじゃ足りないと?」
「当たり前だ」
「……今、手持ち千円しかないんで」
「ビンボー人」

鼻で笑われて、頭に来るがここさえ乗り切ればもう会うこともないだろう、と踏み止まる。
日中に見ても、やはり整った顔をしている。
顔がいい男は苦手だ。

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