チョコレート×キャンディ
「遅れました!」



聞き慣れている声に、みんな、待ってましたかのように振り返る。

黒いジャージを脱ごうとする桜井君がいた。


「おう、遅いぞー。桜井の番だからな、次」


「嘘!?」


桜井君が急いでスタートラインに行くと、男子はさっきみたいに冷やかしながら、後ろで待っている。


両隣の子と何かしゃべった後、先生の合図で位置につく。



「位置について。よーい」



係の人が手を上げた瞬間、風を裂く音がした。

ハッとして桜井君を見ると、隣の人達がいないことに気づいた。

桜井君の前を見てもいない。

後ろには……


「すげぇ草太!」


「ぶっちぎりじゃん!!」


「もうゴールしてる……!」


嘘。



それしか頭になかった。


桜井君は余裕の表情で、ゴールラインでピースしている。


「7.5。8.0」


先生が読み上げたタイムは二人分。

桜井君は笑顔で帰ってきた。




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