チョコレート×キャンディ
「草太草太! 何秒!?」


「6秒代〜。詳しいのは聞こえなかった。それよりちょっと……」




「ヤバイよー!!」

「超カッコよかったー!」

「断トツじゃんね! もうありえない〜」


桜井君を見て、黄色い歓声を上げる女子。

私は桜井君の走りが忘れられず、まだフリーズしたまま立ち尽くしていた。

何度もさっきの映像が頭でリピートされてくる。


あんな走り、初めて見た。


速くて、そして、綺麗だった。


「あんなフォーム、本当にする人いるんだね。……理想的な走りだよ」


近くにいた女子の体育の先生も、そう呟いて。


私は改めて桜井君を見た。


さっきより、距離が近くなってる気がする。

気のせいか……。


「里美! 草太君こっち近づいてくる!」


……違った。


桜井君は止まって、私の目の前にいる。


私はドキドキしてた。

だって、さっきまで桜井君の走りに見入っていて。

その間、少しも歪むこともなかった顔が、身長差があっていても近くにあって。


低すぎない声が、耳に、響いた。



「……白川梨衣子、どこか知らない?」




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