チョコレート×キャンディ
「えっと部活、教えてくれて……」
待っててくれたことを言いたいのに。
異常に緊張して、別のことを言っちゃった。
でも、このことも感謝したいと思ってたから。
おかげで、先輩達にも褒められたんだ。
「ううん。別に……たまたまテニス部の人の会話聞いたからさ」
桜井君はそう言って、自分の手を絡めてそれを見つめる。
桜井君の何気ない表情に、疑問を感じた。
だって先輩は――
“「教室に忘れ物取りに行ったらその子が居てさ、」
「今日の見学のこと聞いてきたから
てっきりそうかなーって」”
「なんか心配してたからさ、伝えたほうがいいかなーって思って」
桜井君はそう言いながら歩き出す。
静かな風に揺れる後ろ姿は、なんだかやけに愛しく思えた。