チョコレート×キャンディ


小さな嘘。

笑っちゃうくらい、バレバレな。





そして、笑っちゃうくらい小さい嘘。




桜井君はきっと、見抜かれてるのもわかってる。


でも、それでも、精一杯ついた嘘。





「そろそろ帰ったほうがいいよね」


「うん」



背伸びをする桜井君に、静かに返す。

桜井君は風に揺られながら一歩一歩と進んでいく。



その姿を見ているのが心地良くて、私はここから動かなかった。






「里美ちゃんっ」



少し跳ねた、大きな声が上がる。

ちょうど曲がり角のところで、桜井君が振り返っていた。


全然移動してない私に驚きもせず。



たぶん、立ち止まってたことも、知ってたんだ。





「また明日ね」


また桜井君はニコニコ笑う。


桜井君はいつも笑ってる気がする。

顔を真っ赤にして爆笑してるときもあるけど、普段は物静かに。



花に例えるより、その横に凜と咲いてる野草みたいに。



後ろ姿が似合う、



綺麗に笑う人なんだ。











< 57 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop