チョコレート×キャンディ
小さな嘘。
笑っちゃうくらい、バレバレな。
そして、笑っちゃうくらい小さい嘘。
桜井君はきっと、見抜かれてるのもわかってる。
でも、それでも、精一杯ついた嘘。
「そろそろ帰ったほうがいいよね」
「うん」
背伸びをする桜井君に、静かに返す。
桜井君は風に揺られながら一歩一歩と進んでいく。
その姿を見ているのが心地良くて、私はここから動かなかった。
「里美ちゃんっ」
少し跳ねた、大きな声が上がる。
ちょうど曲がり角のところで、桜井君が振り返っていた。
全然移動してない私に驚きもせず。
たぶん、立ち止まってたことも、知ってたんだ。
「また明日ね」
また桜井君はニコニコ笑う。
桜井君はいつも笑ってる気がする。
顔を真っ赤にして爆笑してるときもあるけど、普段は物静かに。
花に例えるより、その横に凜と咲いてる野草みたいに。
後ろ姿が似合う、
綺麗に笑う人なんだ。