チョコレート×キャンディ
「へぇ〜、あの人が」
「う〜ん」
私はベッドに寝転んだまま、部屋の天井を見ていた。
お風呂上がりで、夏みたいに体が暑い。
湯冷めしたような寒さに耐えながら、すぐ横の机で勉強しているお姉ちゃんと話していた。
「珍しいよねぇ、里美が男と話すとか」
シャープペンのカリカリとした音を聞きながら、私はじーっと天井を見つめる。
「しかも、あの桜井君かぁ〜。……って、里美ちゃんと聞いてる?」
まともに答えない私にしびれを切らしたのか、お姉ちゃんが手を止めてこっちを向いた。
私はくるっと横を向いて、お姉ちゃんの座ってるイスの脚を見つめ始める。
「もう……あ、千香ちゃんからメールきたよ!」
お姉ちゃんは呆れながら振り返って、かすかに動いている私のケータイを差し出した。
ケータイのサブディスプレイには、<相川千香>の文字がスクロールしている。
ケータイを開いて、やっと慣れてきたボタンを押し、送信ボタンを力無く押した。