チョコレート×キャンディ
“また明日ね”
「言ってたのに……」
布団に包まって、憂鬱になる。
昨日言われた一言が、ずっと耳に染み付いてる。
「里美ー。ほら、おでこ出して」
「はーい……」
前髪をかき上げたら、ひんやりと冷たい衝撃が頭の奥に響いた。
「ひっ!」
「はいはい。熱よ下がーれ」
お母さんは私のおでこに貼られた冷えピタを押さえ、小さい頃から早く治ると教えられた呪文を唱える。
「よしっ。じゃあ、なんかあったら下降りて来なさいね。つらかったらケータイで電話して」
そう優しく言ったあと、お母さんは私の横にケータイを置いた。
薄いピンク色のケータイは、私が動くたび肩のほうへと移動してくる。
「お昼まではいるから、出かけるときまた言いに来るわ」
お母さんは今日パートで、どうしても休めない大事なイベントがあるらしい。
私も急に熱出しちゃったしね。