チョコレート×キャンディ
「三越先生ー! カレー配達です」


「お? あぁ桜井か。皿はどこ返せばいい?」


「あ……。じゃ田丸先生に、家庭科のほうの」


「聞いてなかったのかお前」


「うん」


たぶん二人は近くにいるんだろう。

こんなに声が聞こえるんだから。

それに桜井君はいつも、声が大きい。

廊下にいても、ちょっと笑ったのがわかる。


「柴崎先生はどこに?」


「桜井君、何か用事?」


「先生! これ、家庭科の調理実習で作ったカレーです」


「あらありがとう。頂くわ」


「食器は家庭科の田丸先生にお願いします。――失礼しました」


コツコツとこっちに上履きの音が聞こえてくる。

ドアを開いた直前の桜井君の顔は、さっき塚本先生や三越先生と話していた声を聞いた印象と違って、真剣だった。


ドアを閉めると同時に、表情が和らいでいつもの顔に戻っていく。









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