フリージアとアスチルベ


ああ、もうこんな風には考えないって決めたのに。すぐに出てしまう自分を卑下する癖を。


5つ上の姉、羽瑠は運動も勉強もできる上に家事もできる完璧な姉だった。
顔も整ってるし、スタイルだって完璧だ。
小さい頃は自慢の姉だったはずなのに...


それは成長するにつれて、私にとって邪魔なものでしかなかった。

姉は好きだ。
私にとって大切な家族。

それでも、みんなのいう<完璧なお姉ちゃん>は消えてくれない。
みんなのなかでどんどん大きくなって、私が小さくなっていく。


『お姉ちゃんが出来るなら那瑠ちゃんも出来るんじゃない?』

『あんなお姉ちゃんがいるんだから教えてもらえばいいじゃん。』


姉ができるから自分ができる訳じゃないのに。
そんなことわかりきってるのに、自分の心は周りの言葉に振り回される。

そんな自分が嫌だった。


嫌で嫌で、頑張って変わろうとした。
姉が散々注意されている言葉遣いも気を付けたし、周りの子が好きそうなものはちゃんとチェックして話せるようにもした。

でもそれは、全部姉を意識してしまっていた。

姉に勝てるところばかりさがして、その少なさに苦しんで、どうしたら姉に勝てるんだろうと足掻いてばかりいた。


『そんな無駄なことをして何になるの。
那瑠は那瑠、羽瑠は羽瑠でしょ?』


あきれた様子でいう碧海に、返す言葉が見つからなかった。

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