みんな、ときどきひとり

「してないしてない」

わたしは思いきりかぶりを振った。

なにをやったって言うんだ。貼る下駄箱を間違えたんじゃないのか、なんて正直思う程だった。

例えば、梨花みたいにモテる子ならまだわかる。逆恨みとか僻みの対象になるかもしれない。

だけど、わたしなんかモテないから僻みの対象にも好意を持たれてストーカーされる対象にもなるわけがない。

「だよね。優菜が恨まれる意味がわかんないもん」

「まあ、そうだよね。そういえばさ。1年のとき梨花も張り紙されたよね?靴隠されたりとかさ」と、美和子が言った。

「あー!あったね。そのときは確か、梨花と同中の2年がやってたんだよね。彼氏盗ったとか言いがかりつけてきてさ」

「優菜がすごい切れて解決したんだよねぇ」

梨花がふふふと思い出し笑いをするけど、美和子の剣幕が一番すごかったはずだ。

「えーっ。美和子がいちばん怒ってたよ」

「そうでもなかったって。でも本当になんだろう。気持ち悪いね」と、美和子は呟いた。

3人で紙を見つめながら首を傾げるけど、答えなんか浮かぶはずもなかった。

だけど、わたしはやっぱり犯人が下駄箱を間違えたのか、ただのイタズラとしか思えなかった。
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