みんな、ときどきひとり
「大丈夫だよ。今日だけじゃない」
わたしは本気でそう思ったから、美和子から紙を受け取り、下駄箱のゴミ箱に投げいれた。
「えー。でも何かあったら怖いよ」と美和子はまだ不安を口にしているけど。
教室に戻って机や鞄の中を見てみたけど、授業の前と変わりなかった。
帰りに下駄箱に行っても張り紙はされていなかったし、靴も隠されることもなかった。
思った通り何かの間違いだろうと、すっかり安心した気持ちになった。
「じゃあね」と、自転車で帰る梨花たちに手を振って一人、駅へと向かった。
いるはずのない亮太を見つけたのは、電車の中だった。
「あれ、亮太?」
亮太が吊り革に手をかけ、立っていた。ゆっくりわたしを見る。電車はいつも反対方向なのに。
「あれ?今日こっちなの?」
「おっ!偶然。今日、予備校なのさ」
「勉強してるの、似合わないんだけど」
「うるっせーやい。俺だって受験生なんです」
「はいはい」
いつもの笑顔に素っ気なく返すけどドキドキしてるのが自分でもわかる。
「亮太はもう進路は決まったの?」
「んー。M大かC学あたりかな」と渋い顔をした。
厳しいってことなのかな。成績落ちたって言ってたし。
だけど、どっちも県内か。