みんな、ときどきひとり
「えー。でも、誰かわからないよ?わたし、顔覚えてないもん」
「そうだけどさ」
梨花の言うことはもっともだけど、わたしが水城くん見たさで教室を覗いてることが見つかったら恥ずかしすぎる。
「でも、運命の出会い感じるよね。カラオケで会った人が同じ学校で、あの手紙の渡す相手だったなんて」
「だよね。これをきっかけに、恋が始まったりして」
「好きですって言われたりして」
「実は、前から好きでしたとか言われて。不意打ちでキスされたり?」
「やーん。なんか運命って感じがしてきたよ」
「まさか、んなわけないじゃん」
また勝手に盛り上がって。わたしのことなんか、好きになるわけがないじゃん。
「そんなのわかんないでしょ。実はあっちももう気になってたりするかもしれないよ?」
「デートしたら、告られたりとかだってあるかもよ?」
そんなこと、あるはずないのに。
「ほんっとに違うから!」
思わず声を荒げてしまった。
あんなにはしゃいでた2人の表情が一瞬で強張ってしまい、シンとした。