みんな、ときどきひとり
教室に戻ると、さっきまでの気まずさは嘘かのように、美和子が話し始めた。
「いいじゃん!」
そうかな。わたしには素っ気ない彼しか思い浮かばない。
表情変わらないし。まあ前に比べたら話すようにはなったけど。
「うんうん。わたしもかっこいいって思った。綺麗な顔してたね。あんな子いたんだ」
「ええ、そうすか」
興味なさそうに、適当に返事をするのに2人の熱は冷めないみたい。
「クールだから。そうだね……氷王子だね」
「美和子、なにそのネーミングは?」
「テレビの中には、王子多いじゃん?真似してみた。王子顔だから」
「確かに。王子っぽい」
「ないないないない」と無駄に連呼して否定した。
あんな王子いたら、一生姫のお迎えになんて行かないだろうな。
わたしなんて最初、キツネ男なんて思ってたのに。
キツネ男から氷王子に昇格ですか。
「まあ、なにかあったら言うんだよ」と、美和子と梨花がわたしに笑顔を向けた。
そうだよね。2人はいつも、わたしのことを心配して思ってくれてるんだよね。
友達なのにな。そう思う。
なのに、わたしはあんな言葉を言うのを止められなかった。