みんな、ときどきひとり
あれから水城くんと、日曜日に会う約束をメールで交わした。絵文字も句読点もない素っ気ないメールだった。
彼らしさが表れているなと思った。
日曜日の天気はあいにくの雨。季節は梅雨に入ろうとしている。
水城くんは13時までバイトだったので駅前で待ち合わせをすることにした。
だけど、早めについてしまって駅前をぶらっと歩いているうちにトムボーイの近くまで辿り着いてしまった。
「あれ?優菜さん?」
通りの向こう側から来る茶色い髪の女の子に名前を呼ばれて、立ち止まった。
「真理恵です。この前、遊園地に一緒に行った」
その言葉で、思いだした。
「あ。真理恵ちゃん。もしかして今からバイトなの?」
「そうなんですよ。なにしてるんですか?」
「あっ、うん。水城くんがバイト終わるのを待ってるんだけど」
言ったあと一瞬、はっとした。
遊園地では水城くんの隣にずっといたから、もしかして好きだったりするのかなと思ってしまったからだ。
だけど真理恵ちゃんは、わたしの発言に表情も変えずにさらりと訊いてきた。
「そうなんですか。あっ、もしかして優菜さんと修くんって付き合ってるんですか?」
「えっ?違うよ!」
そういう風に見えてることに驚いた。
「ほんとですか?修くんと仲いいんですけど、女の子の話聞いたことないから。そっかぁ。
あっ!今日店長、午後休みでサービスできるからあとで寄って下さいよ。タローはいないけど、みっちゃんもいるし。遊びに来て下さい」
「えっ?そんなことできるの?」
「全然、ばれないですよ。いない日はキッチンとかで隠れて食べたりしてますもん」
「本当に?あー。でも、悪いしいいよ」
「全然。待ってますから。来てほしいです。じゃ、あとで!」
時間なのか足早で真理恵ちゃんは店の中へと消えて行った。