みんな、ときどきひとり

あの日あまり話せなかったけど、いい子なのかな。外見はいかにもギャルだけど、すごい気さくだし。

そんなこと思いながら店の前で待っていると、水城くんが外へ出てきた。

「なんでここにいるんですか?」

店の前にたたずむわたしを見つけて、驚いたような声をだす。

「ごめん。早く着いちゃって暇だったからこっちまで来ちゃった」

「そうですか」

「そういや、さっき真理恵ちゃんに会ったよ。あとでトムボーイに食べにおいでって」

「嫌ですけど」

一瞬にして顔が険しい表情に変わる。

「え。なんで?行くって約束しちゃった」

「じゃあ、俺はこれで」

立ち去ろうとした彼の腕を瞬時に掴まえる。

「なんで、逃げるかなぁ?わたしは、今日雨の中、なにをしにきたのかなぁ」と、笑いながらも、強めに言葉を強調する。

それを見て観念した顔で頭をかいた。

投げやりにも程があるよ、水城くん。

とりあえず駅と逆方向へ足を運ばせることにした。
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