みんな、ときどきひとり
「俺、姉ちゃんいるんですけど。最近、子供産まれたんですよ。それで買っていこうかと」
「あっ、そういうこと。確か上の階にあったかも」
エスカレーターで4階へとあがる。
意外すぎて今さら、自然に笑いがこみ上げてくるのを堪えた。
「なんですか。その笑いを我慢したような顔」
じろりと私の顔を睨むように見る。
「別に。ふふ。ていうか、子供、苦手だったんじゃなかったっけ?」
「好かれないだけです」
「まあ赤ちゃんの頃からいたら懐いてくれるかもるかもしれないもんね」
そんなことを言いながらベビーコーナーで、スタイを探すことにした。
赤ちゃんサイズの靴や帽子、肌着があって小さくて可愛い。目がハートになってしまいそうだ。
「なにがいいかわかんないっすね」
どれを見てもピンとこないのか、スタイを見比べながら、何も選べずにいた。
「性別は?」
「女です」
「女の子か」
偶然手に取ったスタイには目が書かれていて広げるとうさぎの顔だった。
「これ可愛い。ぜったいこれ」
突きつけるように見せると、一瞥してはぁと小さな溜め息をついた。
「なにそれ?人が真剣に選んでるのに」
「すいません。自然と溜め息が」
そんなにセンスないかな、わたし。
「じゃあ、こっちの猫は?」
「先輩に似てますね、これ……」と言いかけた水城くんをふてくされ気味で見つめた。