みんな、ときどきひとり

だからか「いや可愛いですよ」と言い直した。わたしが言わせたみたいだ。

「じゃあ、これ買うよ」

「いいですよ」

「だから。わたしは今日何のために来たのかな?」

「そうですね。じゃあ、優菜先輩からって渡しておきますから」

「それって水城くんのお礼になってないでしょ?」

「なってますよ」と言って、うさぎと猫のスタイといつの間に選んだのか、ピンクのくーまのカバーオールを持って、レジへと向かった。

ラッピングされた袋を水城くんが受け取った。

払うって言ったのに、結局、お会計するときに水城くんが支払ってしまい、1円も出すことが出来なかった。

「お礼になってない」と言うと「選んでくれたから、それだけでいいですよ」と彼は言った。

わたしが選んだものに溜め息をついたくせに不思議な人だと思った。

1階に下りる。店の自動ドアが強風でガタガタと揺れていた。

本当に風が強い。おまけに雨も。

外に出て、傘を広げた瞬間、強い突風に身体が押される。「わあ!」と驚ろきの声をあげてしまった。
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