みんな、ときどきひとり
水城くんの腕が、後ろからわたしの肩を支えるから、思わず掴んでしまう。
「あ、ありがと」
ふと、横を見ると目の前に彼の顔があった。
「きゃあ!」
今度はチカンにあったかのような悲鳴をあげてしまい、恥ずかしさのあまり水城くんの手を離した。
心臓がドキドキする。当たり前か、いつもドキドキしている。そう言えば、同じくらいの背丈だもんね。目線が近くて当り前か。
落ち着いたふりをして、ビニール傘を広げるとさっきの風の勢いで折れてしまっていた。
「あああ!」とまた叫んでしまう。
「先輩、ひとりでさっきから騒ぎすぎですよ。こっち入って下さい」
目尻にしわを寄せて、笑いながら黒い傘をわたしの頭の上にさした。
「ありがとう。ああ、買ったばっかだったのになぁ」と言いながら、いつも無表情な水城くんが笑う姿を初めて見たことに気がついた。
こんな顔して笑うんだ。
その表情のせいなのか。
なぜかまた心臓がドキリと大きい音をたてた。