みんな、ときどきひとり
「俺、先輩にぶつかられたことがありますよ。学校で」
「えっ?本当に?」
「中庭だったかな。ボールがぶつかって、よろけてました」
「そんなことあったっけ?」
いや、あったかもしれない。亮太に爆笑された日のことを思い出した。
「ひとりだったから、笑い堪えるの必死でしたけど」
「うわ。恥ずかしいな。どこで見てるかわからないね」
普段の自分の行動が恥ずかしく感じてきたけど、水城くんでもそういうことで笑うんだ。
意外な気がした。笑わない人だと思っていたから。
なぜか心がくすぐったくなる。
「なんか目立ちますよね、先輩って」
「えっ?身長が高いから?」
「それだけじゃないですよ」
やんわりと彼はそう言った。同じ目線で。