みんな、ときどきひとり

店内に「いらっしゃいませ」の声が響き渡る。なかなか混み合ってるみたいで、来るタイミングを間違えてしまったかもと後悔した。

「はい」

水城くんがドリンクバーのグラスを持ってテーブルへと戻ってきた。

「あっ、ありがとう」

オレンジジュースの入ったグラスを受け取る。

「そういえば」

急に意味深な顔をした。

「そういえば?」

「いや」

言いにくそうに口ごもる。明らかに様子がおかしかった。

だけど真理恵ちゃんが、テーブルにきて「修くん、原篠さんがシフトのことで話あるって」と告げた。

「シフト?」

「うん、交換してほしいんだって」

「先輩、ちょっと行ってきます」と、面倒臭そうに席を立つ。

見送るように「はいはい」と、手を振って結局聞けなかった。

しばらくすると水城くんより先にわたしのチキンドリアがテーブルに届いた。

話し込んでいるのかな。先に食べてようかな。

とりあえず、タバスコかけよう。

ドリンクバーのところに置いてあったことを思い出し、取りに行こうと席を立った。

だけど向かう途中、見覚えのある姿を見つけてしまった。

まさか、居るはずがないと思いながら、見間違いだろうと思いながらも、胸は期待で高鳴って行く。

距離が縮まるに連れて、その予感は確信へと変わった。
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