みんな、ときどきひとり
「ごめん。ちょっと、トイレに行ってくるね」
デザートのレアチーズケーキを食べ終えて、そう告げたあとトイレに向かう。
遠目で亮太の席を見ることが出来るからだ。
そこから、まだ2人の姿はテーブルにあることが確認できた。
なんだ、まだ帰らないのか。帰り辛いな。
トイレのドアを静かに閉めた。
亮太と一緒にいた子は彼女なのかな。それとも友達なのかな。
一人になると、さっきまで考えないようにしていたことが一気に溢れてきた。
一瞬しか見えなかったけど、可愛い女の子だった気がする。
サラサラのロングの髪に小柄な体系で、大きな瞳。
どことなくだけど、雰囲気が少し梨花に似ていた気がする。
わたしは、鏡の中の自分を見つめてみた。
いつ見ても変わらない。
つり目の睨んでいるような顔に、亮太より低くなることのない身長。
「勝負あったな」
心の中でまた呟いてみた。
一緒にいた子は彼女かもしれない。
もし、友達だとしてもわたしには勝ち目がない。
また、失恋か。
なんて、思ってみたけど。
ほんとに、失恋なのかな。
ずっと亮太に恋したままで、何もわたしは失ってなんかいない気がする。
ずっと、亮太に恋したまま、何も伝えることもないまま、それでも失恋なんて言っていいものなのだろうか。