みんな、ときどきひとり
心が泣けば
わたしが、ペラペラと教科書をめくって探し物をしていると、「あれ?そういやこの前のデート、なにもなかったわけ?」と、わたしの前の席に座って、足を組んだ美和子が思い出したように言った。
「何もないよ。そのあと送ってもらって帰りました」
「好きです、先輩。的なこともなし?」
今度は男の声マネをするから、あきらかにからかいたいだけだ。
「ないよ。わたしのことなんか好きになりませんよーだ」
「じゃあさ、優菜はどうなの?いいかな?なんて思った?」
梨花も話に加わる。
「えっ?うーん。思ったよりいい子なのかなとか思うけど、好きとかは別に」
「優菜の好きなタイプ、本当にわかんないな。かっこいいと思うんだけど」
美和子は不思議そうに眉を下げる。
「うーん。わたしもよくわかんないや。まあ、気長に頑張るさ。運命の人探し」
わたしは早くこの話を終わらせたかった。掘り下げても、なにも出てこない話なんかするだけ無駄だから。
「ねえ、優菜。高校入ってから本当に好きな人出来なかったの?」
そんなわたしを見透かすかのように、梨花が真顔で言った。わたしの目を見つめながら。