みんな、ときどきひとり





お昼休みになって、梨花たちと3人で学食に行った。

「あそこら辺座ってるから」と、お弁当の2人は先にテーブルのほうへと向かった。

「あーい」

今日はなにを食べようかなと見上げたいつも見てるメニューがどれもおいしそうに見えなくて、なぜか立ち尽くしてしまった。

どのくらいそうしていたのだろうか。

はっと亮太の声で気がついた。

「田口、なにボーっとしてるんだよ?選びすぎ。並ばねーのか?」

「り、亮太?おどかさないでよ」

「お前がボーッとしてるんだろうが。普通気づくって」

亮太は小馬鹿にしたような笑い方をする。

「俺、今日なににすっかなぁ。ラーメン。牛丼。A定……悩むなぁ」

「ねえ。どうしょっかなぁ」

この様子からすると、あの日わたしがトムボーイにいたことには全然気づいてないみたいだ。デートの現場を見てしまったことも。

「なっ。あれ、あいつじゃねぇ?」と、急に亮太は小声でわたしに耳打ちをしてきた。

亮太の視線の先を追いかけると入口のドアから入ってくる水城くんの姿が見えた。

「田口の彼氏」と、にんまりと笑いながら冗談っぽく言う。
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