みんな、ときどきひとり
「だから彼氏じゃないって」
だから、わたしも冗談っぽく笑いながら返した。
「でもなんか、人気あるみたいだなあいつ」
「えっ?なんでそんなこと知ってるの?」
「いや。お前が付きあう奴だからちゃんとした奴かどうか気になってさ。調べたんだ」と、急に真顔になる。
亮太のその表情と言葉にわたしの胸は不覚にも大きく弾んでしまう。
「なんてなっ。この前、女子がかっこいいとか言ってたの聞こえただけなんだけどなっ。ははは」
一瞬の真顔からいつもの亮太の笑顔に戻った。
亮太にとってはいつもの冗談にすぎないはずなのに、今のわたしには返す言葉が見つからない。
「はは」と軽く笑ってみせるのがやっとだった。
そんなわたしに気づいていないのだろう。
ポケットから携帯電話を取り出してキーを何度も押す。
「彼女にメール?」なんて訊いてしまう勇気なんてやっぱり今日もなかった。
目の前に亮太がいてもいなくても。
いつだって、知ってる。
わたしに言う言葉は冗談ばっかだって。
知ってる。
わたしが誰のことを好きになっても気にしないことくらい、知ってるけど。
だけど。
もう限界かもしれない。
洟の奥がツンとして痛くなってきた。
涙が出る。唇をかんで、顔を亮太に見せないように逸らした。