みんな、ときどきひとり
「送ってくれなくても大丈夫だったのに」
わたしの最寄駅まで、水城くんが送ってくれた。
「あ、あとこっちに用事あったんで」
「えっ、用事?」
わたしの住んでる駅前は住宅街で、大きな建物と言ってもコンビニやスーパーがあるくらいでわざわざ立ち寄るところもなさそうに見える。
こんなところに用なんてあるのだろうか。
「この前送ったとき、気づいたんですけど。俺の姉ちゃんちの最寄駅と同じだったんですよ」
「あっ、もしかして赤ちゃん生まれたお姉ちゃん?」
「はい」
「すごい偶然だね」
「ですね。だから、顔だけでも出そうと思って。見に来いって写メすげー送ってくるんすよ」
「あっ、写メ見たい!」
「いいですよ」と言って、携帯から写メを表示させたあと、わたしに手渡してきた。
画面には、カメラを不思議そうな顔をして見つめている、お猿さんみたいな赤ちゃんが写っている。
「可愛い。本当に生まれたてだね」
「可愛いとか言ったら、姉ちゃん天狗になりますよ」
「でも、これはなるでしょ。天狗にも親ばかにも」と言いながら携帯を水城くんに返した。