みんな、ときどきひとり
画面を見ると非通知と表示されている。
なにこれ。
携帯を持つ手が震えた。
心臓が速くなるのが自分でもわかった。
10秒くらい鳴ったあと、静かに電話は切れた。
恐る恐る周りを見渡しながらブランコから立ち上がる。
公園は相変わらず、人の気配も視線も感じられないくらい静かだ。
そう思っていると、また携帯の着信音が鳴り響いた。
さっきの非通知かと思い電話を開くのをためらった。
亮太。
こういうとき、意味もなく好きな人の名前を呼んでしまう。呼んだって、現れもしないのに。
ひと呼吸おく。心を落ち着かせたあと、携帯を開いた。
「もしもし」
電話の声は水城くんだった。
「水城くん」
「ちゃんと、家着きました?」
「あっ。うん」
心配して電話をくれたのだろうか。水城くんの声に少しほっとした。
だけど、葉が擦れあうような音がして、体がびくりと反応した。草むらを見ると揺れていて、まるで生き物が潜んでいるように見える。嫌な予感がした。
そのとき、黒い物体が勢いよく飛び出してわたしの足元を走り去っていく。
驚きのあまり大きな声で叫んでしまった。
「どうしたんですか?」
物体は少し歩くと止まって、こっちを振り返る。
猫だ。
一気に安堵の溜め息が漏れた。
「ご、ごめん。猫が草むらから飛び出してきてビックリしちゃって」
「先輩、今どこにいるんですか?」
「えっと、公園」
それから5分も経たずに、息を切らした水城くんが公園の前に現れた。