みんな、ときどきひとり

エントランスから中に入り、803号室の前で水城くんは立ち止まるとインターホンを押した。

エントランスでのやりとりで、わたしたちが来ることを知っていたせいか不用心にもドアが開いて、小さな女の人が顔をだした。

水城くんとわたしの顔を交互に見たあと「こんばんは」と大きな瞳が微笑んだ。

「夜分遅くすみません。お邪魔します」

「うん、あがってあがって」と心地よい声で、リビングの白いソファに案内してくれた。

白と黒を基調とした、シンプルな部屋だ。ソファにテーブル、棚に大きめの観葉植物。

棚の上にはお姉さんの結婚式だろうか、ウェディングドレス姿の写真が飾ってあった。

「ほんとモデルさんみたいだね」と、お姉さんはテーブルにジュースを置きながらわたしに微笑みかけた。

「えっ?でかいだけですよ」

「そんなことないよ。顔だって小さいし。いーなぁ。身長、高いってやっぱりかっこいい」と、わたしの顔をまじまじと見つめた。

そんなに、見られると女性の人でも照れてしまう。

なんだか変な感じだ。

思わず目のやり場に困ってしまい、視線を棚に移す。

さっき見たウェディングドレスの写真の隣に幼い女の子と男の子の写真が飾ってあることに気づいた。

面影から推測するとお姉さんと水城くんに見える。

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