みんな、ときどきひとり
水城くんは幼稚園くらいの年だろうか?

坊主頭で真顔でカメラを見つめている。真ん中には、ケーキの着ぐるみが写っていた。

「K丸?」

思わず呟いてしまった。

「え?」とわたしの視線に気づいたのか、お姉さんは立ち上がって写真立てを手にした。

「あー。これね。わたしと修が小さいときの写真。昔、ここらへんに住んでたからよく遊びに行ってたんだ。レアじゃない?修の坊主姿?」

「確かに、今の姿と想像つかない」

意外に可愛いかもしれない。

後ろから、「何、見せてるんだよ」と声がして振り返ると隣の部屋の和室の襖を開けて、水城くんがこっちを見ていた。

「いいじゃん。今より可愛いんだし。女の子に見せたらポイントあがるかもよ?」

その顔にさっきの坊主姿を思い出して、つい吹き出してしまった。

「先輩も笑わないで下さいよ」

「うんうん」と言いながら、また笑いそうになる。

「小さい時なんだから仕方ないじゃないですか」と言うと横を向いた。

「ふふふふ」

「あ。うちの愛娘、寝ちゃってるけど見ていく?」と満面の笑みでお姉さんが言った。

リビングの隣の部屋の和室に行くと、ベビーベッドに横になって眠る赤ん坊がいた。

小さい。もちもちの触れてしまいたくなるような肌。

「可愛い」

「でしょ。可愛いでしょ?ほのかって言うのよ。寝てる姿も可愛いんだけど、起きてても可愛いんだよぉ」

水城くんはお姉さんのはしゃぎっぷりを見て、「言った通りでしょ」と言った。

「なによ?あんた何か言ったの?」とお姉さんは不思議そうな顔をして、ほのかちゃんの頭をそっと撫でた。

白い手で優しく撫でられてるほのかちゃんはすやすやと寝息をたてている。

ふと、弟を初めて見た朝を思い出した。
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