みんな、ときどきひとり
「この前借りた本に挟んであったの見たの。大切そうに持ってたよね?」
笑った顔が一気に強張る。落し物ボックスにあった亮太とのツーショット写真。
教科書に挟んだつもりでいたのに、あのレシピ本の間に挟んでしまったんだ。探してもないと思ったら、そんなところにあったんだ。
しかも、よりによって梨花に見られてしまった。わたしがやったわけじゃないのに、言葉を発せられずにいた。
なんて言ったら梨花は納得してくれるんだろう。
納得?
好きっていうのは本当なのに、また嘘をつかなきゃいけないんだ。
言いわけの言葉を探しているうちに、梨花がまた口を開いた。
「好きだったんだよね?」
認めてというように、強く訊いた。
「違うよ。あの写真、元々は美和子も写ってたのに、誰がイタズラしたか、わかんないんだけどツーショット写真にされてて」
「本当に?」
「本当だよ」
「だって、おかしいよ」
「なにが?」
「なんでそんな顔をしてるの?」
きつい。
今のわたしには、きついよ、梨花。
ずっと嘘をつくことで守ってきたけど、今こんなこと言われたら嘘をつけなくなるよ。
誰にも見せたくなかった、本当の汚いわたしが見えてしまいそうになる。
泣きそうなことくらい、わたしだって、気づいてた。