みんな、ときどきひとり

もうごまかしはきかない。

涙をためる自分を想像しながら、そう思った。

「好きだったよ」

「いつから好きだったの?」

「1年のときから好きだったよ」

「わたしと付き合う前から?」

「うん」

「言ってくれたら良かったのに」

「言ったら……言ったら何か変わった?」

思わず声が、大きくなる。

「梨花のことを好きな亮太が、わたしのことを好きになってくれた?」

きっと何も変わらないよ、梨花。

わたしが言っても言わなくても、亮太は梨花を好きになって、わたしは友達だったよ。

強くそう思う。

わたしの目の前にいるこんな言い争いをしても、可愛い女の子を見て。

ダメなものはダメなんだ。

「梨花には、わたしの気持ちなんかわからないよ」

「わからないよ。何も言ってくれない優菜の気持ちなんか、わかるわけないじゃん」

熱気を帯びた空気に包まれてるみたいだった。熱くて、目を開けれない。なにも訊きたくない。そのまま目も耳も塞ぎたくなる。逃げ出したくなる。

「言ったって、わかんないよ。梨花みたいになんでも手に入る子は。好きじゃない人にも好かれる子には。わたしみたいに誰にも思ってもらえない人の気持ちなんて」

そうだよ。求めなくたって、願わなくたって梨花はなんにでも手が届くんだ。

誰にだって思ってもらえるんだ。
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