みんな、ときどきひとり
「優菜。わたしのこと、そうやってずっと憎んでたの?」
憎んでるんじゃない。そんな気持ちだったら、ずっと友達でなんていられるわけがない。
確かにひがんでいたけど、梨花のことは好きだ。その気持ちに嘘はない。
そう思っているのに、気持ちに見合う言葉を見つけられずに、わたしはまた口を閉ざしてしまう。
「そっか。友達じゃなかったんだね」と言って柔らかく笑うと、梨花は鞄を手に取り小走りで教室を出て行った。
引き止める言葉が発せられなかった。
ただ粉々になった心と空っぽなわたしだけが置いて行かれた気分でいっぱいになって、惨めだった。
「ごめん。お待たせ。帰ろう」と、美和子が戻ってきた。
教室に一人ぼっちのわたしに気づいて「あれ?梨花は?」と言った。
「なんか、帰っちゃった」
「へっ?なんで?今日暇とか言ってたのに」
目をパチクリさせて不思議そうな顔をしていた。
美和子も。
美和子も、わたしが亮太のことを好きってこと知っていたのかな。
「美和子、ごめん」と言ったあとも変わらず不思議そうな顔をしてわたしを見つめた。