みんな、ときどきひとり





その日の帰り道、誰かの家の庭にある紫陽花を見つけた。

雨靴をはいた小さな子供が、それを見てはしゃいだ声を出している。

目をこらすと葉に乗っかっている、小さなカタツムリ。

その子が、指を目にさすと中に引っ込む。

また時間がたつと、顔をだす。

そんな光景を見て、わたしみたいだなと思った。

小さな薄い殻を持っていて、傷つけそうなものがきたら中に閉じこもる。

でも、外の世界を見たくなってまた飛び出す。

その殻は、頑丈だと思いこんでいるけど本当は薄くて。

なにかあったら、ふみ潰されてしまうんだ。

だけど、ふみ潰されるかもしれないけど、自分から殻を破くことなんか、出来るわけがない。

それひとつで、わたしなんだから。
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