みんな、ときどきひとり
学校には、梨花の姿がなかった。担任が「欠席」と、言ってた。
梨花が休むって珍しい。なんとなく、体調不良とか、そういう類ではないような気もしてしまう。
「梨花、休んじゃったね」と、美和子が言った。なんでだろうね?と、少し訝しげに。
美和子も同じことを考えているのだと思う。
「そうだね」
「なんか、話しかけようとしてもうまく逃げられるし。わたしもなんか無理だったわ。どうしちゃったんだろ」と、心配そうな顔をする。
だけど2人で幾ら話しても、梨花がいないのだから解決の糸口も見つかるわけもなく、平行線の会話で終わってしまった。
家に帰ると、父と母はすでに出かけていて、玄関に靴も旅行鞄もなかった。
その代わり、見たことのない男もののスニーカーが4、5足玄関に並んでいた。
そして2階からは男の笑い声が響いている。
大の友達が遊びに来ているのかもしれない。
大は、親と旅行に行くことよりも、親がいない家に友達を呼ぶことを選んだようだ。
朝、わたしが家を出るときに「大も温泉来ればいいのに」と残念そうな顔をして何度もぼやいてた母を思いだした。
階段から、大の友達らしき人が下りてきて、玄関にいたわたしと目が合った。
少し驚いた顔で「こんにちは」と、わたしに腰を折って言う。
その動作も、少し茶色く染まった髪も、彼の幼さの残る顔とアンバランスに見えて、おかしかった。