みんな、ときどきひとり





課題をバックに入れて家を出たけど、なぜか寂しい気持ちになってしまった。

美和子は彼氏と会うみたいだし、梨花とは話せないし。

こういうときに誘える友達がいないことに気がついて余計に寂しくなった。

ふいに水城くんの顔が浮かんだけれど、電話をすることはためらいがあった。

優しいときもあるけど、やっぱりどこか冷たいし。

第一、友達と呼んでいいのかわからなかったから。





駅へと向かいながら、携帯の着信履歴をスクロールする。着信履歴には非通知の文字が並んでいる。

あれから毎日、非通知の電話はきている。昨日なんか、20件くらいかかってきた。

この無言電話でいったいわたしに何を伝えたいんだろう。

こんな風にわたしみたいに、寂しい人間の時間潰しなのかな、なんて思ってみたけれど。

そんなわけないか。

水城くんのお姉さんが住むマンションが見えて、『いつでも来ていいから』と言われたことを思い出したけど、さすがにそれは選択枠には入れなかった。




結局、近くのファミレスで夕食をとりながら勉強することにした。

集中してやったせいか、思ったより時間はかからず、すぐ終わってしまう。

時計を見るとまだ、19時にもなっていない。

微妙な時間だな。

大の友達は何時位に帰るんだろうか。

訊いておけばよかった。

こうなると、ファミレスにいてもすることがない。

ドリンクバーで粘っても良かったけれど、時間の無駄にしか感じられず、とりあえず出ることにした。
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