みんな、ときどきひとり
余ったお金でどこか時間の潰せる場所にでも行こうかな、と思い適当に足を向かわせる。
そして、また今日も携帯の着信音が鳴った。
着信相手は思った通り、非通知だった。
確認して、閉じて、顔をあげた。
誰なんだろう。
なんでこんなことをしてくるんだろう。
なんで非通知からしか、連絡がこないんだろう。
卑屈になる気持ちも誰かにわかってほしくなった。
5メートルくらい前にいる学ランの男の子が携帯を耳にあてているのが見えた。彼が携帯を耳から離した瞬間、手の中にあった携帯は鳴るのをやめた。
ぞっとした。
偶然にしてもタイミングが良すぎとしか言いようがない。恐怖を感じさせるにそれだけで、充分だった。
そして、視線で男の子を追った。
彼は携帯をポケットにしまったあと、何もなかったかのように人ごみに紛れて消えた。
恐い。
わたしは、自分が思っている以上に今の状況に怯えていることを自覚した。
〝こういうとき〟どうすればいいのかな。
〝こういうとき〟誰かを頼りにしていいのかな。
〝こういうとき〟誰を頼りにしていいのかな。
非通知の着信履歴で埋め尽くされた、携帯電話を握りしめたまま、わたしは立ちすくんでいた。