みんな、ときどきひとり
大切な話
重い気持ちのまま、ベットから起き上がった。
心がどんなに重くても、朝は、月曜日はまたやってきて、わたしを日常の高校生という生活へと連れて行くのだ。
父は昨日の夕方の飛行機で福岡へと帰り、いつもの3人だけの朝となった。
母だけが必要以上に弟に話しかけ、珍しく早起きした大の顔は不機嫌になっていた。
朝から怒鳴り声を聞くのも気分のいいもんじゃないと思って、朝食をかきこんで早めに家を出た。
大とは、またいつものように会話をしない。
電車を降りると、水城くんの姿を見つけた。
「おはよう」
後ろから話しかけると「おはようございます」と、少し眠そうな声で水城くんが言った。
「すっごい眠そうだね」
「そうですね」
それから思い出したように口を開いた。
「そういえば、あれ大丈夫なんですか?」
「ん?」
「非通知ですよ」
「あー。大丈夫だよ」
ごまかす為に軽く笑った。
「本当ですか?」
「うん。あの日だけだった。ごめん、お騒がせ」
「ふうん」と言いながらも、目はなぜか疑っているようにわたしを見ている。
だけど、わたしはなぜか言えなかった。まだ終わっていないことを。
「まあ困ったら連絡ください」
「困ったら?助けてくれるの?」
「弱そうな相手だったら」
少し考えてから頼りない返事をする。
「なにそれ?ムキムキマッチョだったら?」
片腕を曲げてマッチョのポーズをしてみた。