みんな、ときどきひとり
大切な話

重い気持ちのまま、ベットから起き上がった。

心がどんなに重くても、朝は、月曜日はまたやってきて、わたしを日常の高校生という生活へと連れて行くのだ。

父は昨日の夕方の飛行機で福岡へと帰り、いつもの3人だけの朝となった。

母だけが必要以上に弟に話しかけ、珍しく早起きした大の顔は不機嫌になっていた。

朝から怒鳴り声を聞くのも気分のいいもんじゃないと思って、朝食をかきこんで早めに家を出た。

大とは、またいつものように会話をしない。






電車を降りると、水城くんの姿を見つけた。

「おはよう」

後ろから話しかけると「おはようございます」と、少し眠そうな声で水城くんが言った。

「すっごい眠そうだね」

「そうですね」

それから思い出したように口を開いた。

「そういえば、あれ大丈夫なんですか?」

「ん?」

「非通知ですよ」

「あー。大丈夫だよ」

ごまかす為に軽く笑った。

「本当ですか?」

「うん。あの日だけだった。ごめん、お騒がせ」

「ふうん」と言いながらも、目はなぜか疑っているようにわたしを見ている。

だけど、わたしはなぜか言えなかった。まだ終わっていないことを。

「まあ困ったら連絡ください」

「困ったら?助けてくれるの?」

「弱そうな相手だったら」

少し考えてから頼りない返事をする。

「なにそれ?ムキムキマッチョだったら?」

片腕を曲げてマッチョのポーズをしてみた。

< 166 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop