みんな、ときどきひとり
その日も、梨花の席には誰も座ることもなかった。
帰りに、美和子と一緒に駅前のファーストフード店に立ち寄った。
放課後の時間ということもあり、色んな制服の学生がいた。
「メール返事来なかったし、どうしたんだろうね、梨花」美和子が、ポテトを摘まみながら言う。
「そうだね」
「なんかさ。わたしさ、1年のときに梨花の噂話思い出しちゃった」
「噂話?」
「中学のとき、すごい遊んでて、彼氏盗ったりして女子ほとんどに嫌われてたって話」声をひそめて美和子は言う。
「なにそれ。初めて聞いた」
「優菜は、そういう話、うとそうだもんね。そんな噂があったんだよ。まあ、そんときは、可愛いから、そういう噂立ちやすいんだろうなぁとか思ったけどさ。でも、靴が隠されたりとかしたじゃん?あれはひどいって思ったし。うん。だからさ。もし、本当だったらだよ?」
「うん。本当だったら?」
「うーん。遊んでたとかは、どうでもいいんだけどさ。友達がいなかったら、きっと辛いことも多かったのかななんて思って。余計に、心配になっちゃた」
「うん。そうだね」
わたしも同じことを考えていた。梨花は、今何を考えているんだろう。
「梨花に会いにいこうかな。心配だしね」
「そうだね」と言いながらも、まだ伝えるべき言葉を、自分の中で見つけられずにいた。