みんな、ときどきひとり

昼休みになって、待ち合わせの美術室まで足を向かわせる。

いつもだったら、教室の前の階段を上って4階にあがり、南校舎と北校舎をつなぐ廊下を渡って美術室まで行くのだが、今日は、1階の廊下から北校舎に渡った。

何の話をされるんだろう。急に。

美和子が言うように、告白なんかされるわけないんだけど。

そんなことわかっているんだけど。

でも『大切な話』なんて言われると、ちょっと考えてしまう。

彼にとっての大切な話とはなんなのかと。

イケメンのお菓子のこと。

トムボーイのこと。

お姉さんとほのかちゃんのこと。

タローくんのこと。

わたしと彼の間を繋ぐ共通点を何個か上げてみたものの、そこから大切な話に結び付くものが思い浮かばなかった。

それなのに、わたしは2年2組の教室から見える階段を上れないでいつもと違うルートで行く程、意識してしまっていた。

美和子にはあんなこと言ったくせに、矛盾してるな、わたし。

自意識過剰だな。きっと、全然恋愛とか関係ないことなんだろうな。

期待しないでいいよ。どうせ、あとでやっぱりそうじゃなかったってなるんだからと言い聞かせていると、4階に着いた。

それに、水城くんに告白してほしいわけでもない。
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