みんな、ときどきひとり

すぐ右に曲がると、美術室がある。水城くんの姿はまだ見当たらなかった。

北校舎は、職員室や美術室等の教室が固まっていて、クラスがないせいだろうか、授業がない限り人はあまり来ない。

特に4階には美術室と昼間は使われることの少ない生徒会室、空き教室があるせいか、人の気配が感じられない。

秘密の話をするにはもってこいの場所だなと静かな空気を感じて改めて思った。

ていうか、なんでこんなに緊張してるんだろう。

水城くんだよ。

水城くん。

あの、冷たい……と言い聞かせながら、時折見せる温かい表情、仕草を思い出した。

冷たいのか優しいのかよくわからなかったけど。

きっと、本当は優しい人なんじゃないかと、最近では思っている。

美術室の前で10分位待っただろうか。

まだ来る気配も感じられない。

そわそわして落ち着かない。というか、もしかして来なかったりして。

告白どころか、からかわれてるのかな。

不安を考え出すと、きりがなくなり、いつの間にか何を言われるんだろうというドキドキで膨らんだ胸の中の風船はしぼんでいた。

「来ないのかな」

呟いて、帰ろうかと階段へと近づいた。
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