みんな、ときどきひとり
恐い。その気迫に押されすくみそうになる足を、どうにか動かして階段の踊り場までたどり着いた。
「わたしが修くんの下駄箱に入れた手紙、盗み読みして楽しかった?」
「盗んだ?」
聞き返す声が震える。思うように声が発せない。
「わたしが書いた手紙、あなたが持ってたじゃない。わたしを笑い者にして、楽しかった?」
「手紙?」
「しらばっくれないでよ。手紙もってわざわざ、き……教室までわたしを見に来たじゃない。わたしの名前を呼んで探してたじゃない」
そう言いながら、彼女はまた、階段を一段下りてわたしとの距離をゆっくりと縮めてくる。
手紙……。
2年の教室…。
「これ、見覚えありますよね」と、ピンクの便せんを手に取った。
くーまの絵がある。表を返すと〝水城くんへ〟という綺麗な文字。
職員室の前で、水城くんが落とした手紙だ。
わたしが拾って、鞄の中に入れてなくなった手紙がなぜかあの子の手にある。