みんな、ときどきひとり
同時に頭に血がのぼるのが自分でもわかった。
バシッと鈍い音が響くと、わたしもあの子の頬を思い切り打っていた。
「違うって言ってるじゃん。なんでわかってくれないの?」
お互い顔を見合わせた。
彼女の目からは怒りの色は消えずに黙ってわたしを睨む。
わたしもそんな彼女の顔を負けじと睨みつけた。
そこからは、わたしのことを恨んでいる、憎んでいるそういう気持ちしか読み取れない。
階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。
それにあの子も気づいたのか、我に反ったような顔をした。そして何も言わずに、一度唇を噛み締めた後、階段を駆け上がって左へと消えた。
殺されるかと思った。腰がぬけて、へなへなとその場にしゃがみ込みこんだ。
カタッとブレザーのポケットに入れておいた携帯電話が、床に落ちる。拾おうとして、携帯に手を伸ばすけど、震えてうまく掴めない。
非通知の電話はずっと、わたしに「邪魔だ」、「消えて」と訴え続けていたのだろうか。わたしをずっと、憎んでいたのだろうか。
足音がよりはっきりと聞こえてくる。こっちまで来るのかな。立たなきゃと思うのに、腰に力さえ入らない。