みんな、ときどきひとり
「顔、どうしたんですか?」
座り込んでいるわたしの側に駆け寄ってしゃがんだ。目線が合うから逸らした。
「あー。ちょっと」
左の頬を自分の手で触る。
さっきのあの子の表情を思い出す。
こんなときに、あんなことをされたのに。
どうしてだろう。言えない。
「よろけて、壁に激突を」
だから咄嗟に嘘をついた。
なんでかよくわかんないんだけど。
だって、鏡みたいで。
わたしを見ているみたいで。
梨花を見ていたわたしと、一緒みたいで。
一瞬でも、梨花を恨んでいたわたしの心が鏡に映ったみたいで。
だから、わたしを傷つけたみたいで。
このことを水城くんに伝えたら、またあの子が傷ついてしまうんじゃないかって。
わたしもあの子と一緒なんだ。
肩を落として、項垂れた。