みんな、ときどきひとり

「三田村水月ですか?」と、彼が呟いた。

わたしは固まった。

そうだ。

あの子の名前。

さっきまで思い出せなかったあの子の名前。

「ミズキちゃんって言うんだ」と呟いたあと、慌てて首を左右に振った。

そうか、あの手紙の中には彼女の名前が書いてあったんだ、水月って。

「ミズキって人知ってる?」と手紙を持って、美和子たちと教室まで探しに行ったことを思い出した。

あのとき、手紙を持っているのを見て、中を見たと勘違いしたんだ。

でも、なんで……ここまで?

「先輩は、嘘つくのが下手ですよ」

「う、うん。でも、なんでわかったの?」

「昨日、タローが、三田村の携帯を休憩室で拾って、発信履歴に優菜さんの番号があったのを見たって言ってて。
不自然だなと思って気になってたんです。ていうか足、血でてますよ。本当は、何があったんですか?」

笑ってごまかそうとした。だけど、彼の鋭い眼差しに嘘をつくのが心苦しくなった。

「階段から、突き落とされた」

「階段から?」

ただ頷いて答えた。
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