みんな、ときどきひとり
「優菜!」という声で顔をあげると、彼もわたしから腕を離した。
階段の下に息を切らした美和子の姿があった。
「どうしたの美和子?」
「優菜。あんたこそ、どうしたの顔」
階段を駆け上がって、泣きそうな顔で美和子がわたしの前にしゃがんで頬に触れた。
「さっき教室にいたら、水城くんが、優菜を訪ねてきたわけ。
待ち合わせしてるのに、変だなと思って、午前中のメールのこと話したら送ってないって言うし。
彼、血相変えて飛び出して行くし。
わけわからずに着いてきたんだけど……」
「そっか」
わたしは立ち上がる気力が湧いてこなかった。腰に力が入らない。
立ちあがれない。
立ち上がれないよ。
ここから立ち上がれない。
自分の足で。