みんな、ときどきひとり
今日は、予備校があるから同じ方向の電車だった。
ホームに2人で並ぶと、いつもと同じわたしの顔の半分位に亮太の頭が見えた。
「来月、文化祭じゃん。6組何かやるの?模擬店とか」
「なんか、お姉喫茶やるかって話になってるよ」
「まじで?意外に似あったりして」
「俺、下手な女より可愛くなる自信はあるかもしれない」
「よく言う」
笑いながら、うちの学校の制服で埋め尽くされた反対側のホームへと視線を移す。
大はしゃぎして笑っている数人の男子グループの横に立っている水城くんの姿を見つけた。
わたしの視線に気づいたのか、そっと目が合った。
わたしと亮太の姿を確認したかのように、一瞥したあと目を逸らされてしまった。
それに気づくことなく亮太はまた冗談を言って、笑わせようとしてくる。
大好きな亮太の笑顔が瞳に映る。
このまま一緒にいれば帰りの電車の中だけでも亮太を独り占め出来るんだ。
亮太と出会ってから、ずっとそんな些細なことが嬉しくて仕方なかった。
梨花みたいに彼女として隣にいることがなくても。
ただ友達としてでも、一緒にいることが嬉しくて仕方なかった。
だけど、ずっとそうやってきて結局、何にもならなかった。
亮太はわたしを友達以上に見ることもなかった。
わたしは亮太に気持ちを伝えることもなかった。
わたしは亮太を諦めるんだ。
そんなことを思ってから、それすら出来ずにいた。
これをいつまで続けるんだろう。
亮太に気持ちを伝えないと決めたなら、わたしは変わらないといけないんだ。
人の気持ちを変えることも人に気持ちを伝えることも出来ないわたしなら。
せめて、わたしはわたしを変えることをしなければならないんだ。