みんな、ときどきひとり
違う。
赦してもらおうなんて考えながら言う言葉なんて、嘘だ。
そんなことをしたら、わたしは梨花と本音で付き合いたいと思えなくなるかもしれない。
梨花に赦してほしくて言っただけだと、どこかで思いながら一緒にいることになるかもしれない。
そんな気がした。
だから、赦してもらえなくてもいいと思った。
ただ、今、込み上げてきた言葉を伝えたくなった。
「梨花、ごめんね」
わたしは、梨花を傷つけた。
どんな理由にしても、結果それは変わらないこと。
彼女の心の傷をえぐり返すようなことをしてしまったんだ。
「ごめんね」
すっと言葉が出た。
だって伝わってほしいんだ。
梨花はやっぱりひとりじゃないって。
わたしと梨花は違うから、わかりあえないこともある。だけど、その傷はあなたのものだけど、わたしだって今、眺めたんだ。
それを見なかったふりはしたくない。
だって、傷って隠したくなる。このふくらはぎの怪我だって、大事な人以外には、説明するのも面倒くさいんだから。
それを見せてくれた彼女の気持ちを考えると、せめて、一緒に痛かったねって言いたい。
だから、謝りたいんだ。
梨花にしたことを、わたしなりに理解して。
「……かった」
梨花のかぼそい声がした。
「え?」
「良かった。生きてて……良かった」
顔をあげた梨花の目から大粒の涙が零れて頬をつたった。