みんな、ときどきひとり
「ごめん。ごめんね、優菜。亮ちゃんと付き合って、ごめんね」
梨花はそのまま床に崩れ落ちた。
「梨花」
「ずっと好きだったのに、ごめんね。ごめんね。ごめんね」
「ううん」
首を左右に振った。何度も。何度も。
「優菜、憶えてる?
わたしが先輩の彼氏盗ったとか言われて、靴隠されたことあったこと」
「うん。1年のときだよね。
犯人見つけて、美和子と2年の教室まで、文句言いに行ったね」
そうだ、教室まで行って、ちょっとした騒ぎになったんだ。
「あのときさ、どうでも良かったんだ。
靴隠されたりとかするの。
またかって感じでね。
でも、2人がすごい怒ってくれたたじゃん?
なんでこんなことで一生懸命になれるんだろうとか最初は冷めた目で見てたの」
「うん」
「でも見てたらね。
優菜たちが友達だからなんだって、わかったの。
初めてだったの。
………初めてだったの。
わたしの為に、あんなに一生懸命になってくれる友達なんていなかったから。
嬉しかったの。
すごく。すごく
友達だって、感じられたの初めてだったから」
「そんなの……当たり前だよ」
涙を堪える。ここで、わたしが泣いちゃいけないと思ったんだ。だって泣きたいのは梨花だ。わたしは冷静でありたい。
「友達が出来たことがすごく嬉しかったの。
ずっと……ずっと、ひとりだと思ってたから」
彼女の涙が、手の甲に落ちた。