みんな、ときどきひとり

「なのに、その友達の好きな人と付き合ってた……自分が最低な人間にしか思えなかったよ」

心からの声を振り絞って話してるみたいに聞こえるから、わたしだって苦しくなる。

「ごめんね。優菜、傷つけてるの気づきもしなかった」

「違う。違うよ、梨花。
言わなかった、わたしが悪い。
梨花は悪くない」

涙を甲でぬぐいながら梨花は、わたしの顔を見た。その瞳はさっきよりも力強く見えた。

「でも、優菜。
わたし、亮ちゃんのこと好きだったよ、ちゃんと。
すごくすごく好きだったよ」

「うん。知ってた……知ってたよ」と、わたしはまた頷いた。

だって、ずっと一緒にいたじゃん。

梨花のことだって見ていたよ。

亮ちゃんと呼び掛ける梨花の顔。

イルミネーションを見に行ったことを嬉しそうに話す梨花の声。

亮太の手をとる梨花の仕草。

知ってたよ。

好きだったことも。

どれだけ大切かって。

知ってた。

わたしが、本当に見つめなきゃいけなかったのは、梨花をひがむことしか出来なかった、何もしない臆病な自分。

「梨花は、何も悪くないよ」

好きで好きで仕方なかった亮太に気持ちも伝えることもしなくて。

梨花ばっかりって思っていた。

気持ちの矛先を向けるのをずっと、間違えていたんだ。
< 194 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop