みんな、ときどきひとり
「ていうか、梨花。目腫れまくってるよ」
涙目で言うわたしは、人のこと言えなそうだけど。
「えっ?本当に?」
鏡の前でまじまじと自分の顔を見つめる梨花。
そのちょこまかした動作が小動物みたいで可愛くて、笑う。
「あっ。笑ったね。ひどい」
「梨花、変な顔。あはははは」
「ひどい。しかも振られて引きこもってたら、食欲湧いて2キロも太ったもん。最低」
「まじ?普通、振られたら痩せるんじゃないの?悪循環」
そう言うと、ふてくされた顔で梨花はわたしを見た。
「もうあの男のせいだよ。最低男」
「ちょっと訊かせてよ。最低男の話」
それから、わたしたちはずっと話をした。
涙目で真剣な顔で、冗談を言い合ってお腹を抱えて笑って少し泣いて。
最低男の話と最低なわたしたちの話と最低な話を。
心の中身を少し分かち合うみたいに。
最低なくらいが丁度良かった。